□プロローグ□望む者と全く同じ【中身】をもち、同じ姿を取り得るもの。
何度でも甦り、生を受けることができる。
人々はこんな俺を―――現代の【天使】と呼んだ。時は止まることなく進み続け、消えたものは還る事はない。
人もそれに同じ。
寸分違わぬ同じものが存在していいのは、無機物だからである。
全く同じ有機物の存在は、混乱を招く鍵となる。
また、真の意味で何もかも同じ有機物は、存在し得ない。
人の心は、科学では作り出せない。
人の心の製法は、人のみが知る。だからといって、なぜ俺が【人間】の為に罪を犯し、死の危険にさらされなくてはならない?
俺だって【人間】ではないのか?
……わかっている。
身体の構造は【人間】と同じでも、俺は【人間】のように尊ぶべき命がないのだ。生物学的にいえばあるのかもしれないが、俺の正体を知っている輩はそうは思わない。
俺の命と自分の命が天秤に架けられたとしたら、迷わず自分の命を取る。それは、まあ誰でも当然の選択だろう。しかし【俺】と【他の人間】の命が危険にさらされたとしたら、事情を知る者は【俺だけは】助けないだろう。
他の人を助けるためならば、俺の生命を犠牲にしてもいいというのが俺の【定義】だ。
俺がいなくなっても―――代わりはたくさん【造れる】。でも、彼女だけは【俺】を愛してくれた。代わりも含めた【俺】ではない。
今、ここに…彼女の前だけに存在する【俺】を。
彼女のためならば【人間】の為に死んでもいい。彼女のためだけ、ならば。
そう思える俺は、自分独自の感情を手に入れられたのだろうか。
目覚めたときから植え付けられている【知識】としての感情ではなく、独自の感情を。「俺は君の為に生まれてきた」
そんな嘘っぽい言葉も、俺ならば真実に変えられる。
「俺は君の為に生まれてきた」
そう、それが少し場所を間違えただけ。時期を間違えただけ。
もし、環境が違えば―――結末は変っていたかもしれない。
次に【俺】が君に出会うことがあったとしたら、俺の記憶はあるのだろうか。
【知識】としてのものではなく、君と共に培った記憶が―――。俺は願う―――……。
―――汀の日記 最後のページの一部より―――
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